2012/11/22

沙翁の鷹

写真は、記録装置で、感情の引き出し装置。
夏の間撮り溜めた写真たちは、結局演劇では使わないことになった。

写真に写っている人は笑っているのに
もう私に笑いかけてくれない。
昔撮った写真を見返して、泣きそうになった。
一瞬を切り取るということがいかに残酷かを思い知った。
鳥を撃つのも写真を撮るのも、その瞬間に対象物を射撃し、殺しているのだ。
それでも私は一瞬を切り取り続ける。
荻島が鷹に獲物を獲らせる時、戯曲を書く時、
私は写真を撮り、曲を作る。
そのすべては一瞬を殺し、永遠に見せかけることなのだと思う。

なにも殺さずに生きるのは無理な話のようで。