2020/11/15

偕老同穴

 ひんやりした朝、うだるような夏。

思い出すことが多い。記憶の引き出しを開ける度に、そんなところにまで刻まれていたのかいと自分に驚く。


ひとつひとつの小さい記憶の引き出しを丁寧に掃除して定位置に戻していくような生活をしている。少しのことで引き出しは壊れてしまう。他者に故意に壊されることもある。大丈夫になるのに近道や裏技はなくて、壊れないように石橋を叩いて渡る。それでも変わりたいと思う意思だけが私を進める原動力で、もうこれを始めて10年にさしかかろうとしている。人生で関わった人間たちの言葉が、その時そのままのテンションでぐわんぐわんと鳴り続ける轟音の中を高音部を聞き取る部分が麻痺した耳を曝して歩いていく。